縁の腐る前

「武者小路卓也だな、面貸せ」
 ドアを開けると、見覚えのない人間が立っている。見覚えないと言っても、この状況に心当たりが無いわけではない。
「何? 君の本命?」
 傍に立つ女に声をかける。
「知らない……
 当てが外れたようだ。
「なーんだ、じゃあ貸す必要ないじゃん。てっきり僕のこと刺しにきたのかと思っちゃった」
 じゃあねとドアの外の男に声をかけてドアを閉めようとするが足をドアに挟まれて防がれる。仕方なく女に部屋に戻るよう言い、それから外に出る。
「あのさぁ……しつこい男はモテないよ、僕に何の用?」
「お前今何人女が居る?」
「は? 何で答えなきゃ……
 サッと何かを差し出される。写真がざっと10枚ほど……全て別の女性と自分が並んで写っている。
「うわー、よく集めたね、僕のファン?」
「な訳あるか! 俺のところに浮気調査の依頼が来まくって困ってんだよしかも8割お前絡み!」
「へえ、探偵さんなんだ。儲かってんならいいじゃん」
「ふざけるなよ、仕事でやってんのにお前のストーカーみたいになって気分悪いんだわ」
「ウケる」
「ウケない」
 言葉を交わすほど男の顔が苦々しくなっていくのを見るのは少し面白い。
「そもそも派手だわコソコソしないわでお前絡みの調査だとすぐ終わるんでめちゃくちゃ儲かるってわけでもないの最悪なんだよな」
「コソコソしないのはそりゃそうじゃん僕悪いことしてないし」
「してるんだよな〜〜〜」
「暴力も振るってないしお金も巻き上げてないよ?」
「人のモンに手ェ出してるんだよな〜〜〜〜」
「そんなの顔だけの男に靡くような女しか囲えない男の甲斐性の問題だよ」
「本当に最悪」

 ……この男とはなんやかんやあって長い付き合いになることになるが、それはまた別の話。