君の失恋

「全く、僕らってほんとどうしようもないね、変なところばっかり似てる」
 冷えた缶ビールを開けながらそう呟けば、不機嫌そうな「ハァ?」という声が友人から聞こえてくる。
「一緒にするなよ」
「まあまあそう睨まないで。心中お察しするよ。僕なんかにわかられたかないと思うがね」
……何が似てるって?」
 缶をぐっと呷って頭痛がするほど冷たいビールを流し込み、軽く息を吐く。
「何もできなかったんでしょ、しなかったって方が正しいかもだけど」
……
「そういうの、手が届かなくなってからわかっちゃうんだよね。ああ、そういうことだったのかってさ」
「理解できるなら抉るようなこと言うな」
 レンズの奥からじと、と睨みつける空色にも臆せずに続ける。
「けど君はただわかるよ〜って言っても信じないじゃん、特に僕みたいな奴の言うことはね」
「自己分析が得意なようで」
「お褒めの言葉どうも。そんなわけで慰めるにも僕の言葉を信用してもらわないとしょーがないから共感する理由を説明したワケ。どう?」
「ご説明ありがとさん。で、どう慰めてくれるんだ?」
「気が済むまで飲んで、全部吐き出しちゃえば良いんじゃない? 話はいくらでも聞いたげる。……女の子だったら抱きしめてあげるんだけどね、君はそういうの要らないだろ」
 僕の言葉を聞いて、少し驚いたような顔をしてからセローナは缶を傾け、喉を鳴らす。
「ならお言葉に甘えてそうさせてもらおうか」
「どうぞどうぞ、今日ぐらいはパシられてあげるから新しいお酒でもおつまみでも、欲しいものがあればいくらでも」

****

「あのね……全部吐き出せとは言ったけど吐くまで飲めとは一言も言ってないんだよね」
 酔い潰れて足元に転がる友人を見下ろしながらため息を吐く。僕には珍しく息の長い友人であったが、こんな風に弱った姿を晒されるのは初めてだった。
 どうせまた吐くだろうと床に寝かせたまま、適当にタオルを掛けてやる。
「床に転がしていても死なない季節で良かったね」
 返答は無い。
「初恋か」
 柄にもなく、昔のことを思い出していた。
……これはただの独り言だから、もし聞こえててもそのまま水に流して欲しいんだけど」

 風呂上がりに飲むビールが嫌いだ。あの人が好きなものだったから。
 女性を粗末に扱う男が嫌いだ。あの人がそれで苦しんでいたから。

……それと、君の目だけは嫌いなんだよね。澄んだ青空みたいな色しちゃってさ。ヤなこと思い出す」
 そう言いながら鏡を見れば、その青空を見上げる水溜りのような色が見えるのだ。
「何でこのタイミングで鏡なんか見ちゃったんだろ……はー最悪」
 自分の世界が端金で買い叩かれていくのをただ見ているしかできなかったあの日の空と、それを映していた雨上がりの水溜りを思い出したくないのに思い出してしまう。

……君はその恋、引きずらないといいね。セロちゃん」

 もちろん返答は無かった。