『12月25日』

 友人には血の繋がりのない子供が何人も居る。
 血の繋がりこそ無いが、その溺愛ぶりは自分の手を離れた子供であろうと祝い事や行事の日には何かとつけて電話をかけたりケーキを買ったり、とにかく子供にとって大切であろう1日を大事に祝う姿からもよく分かる。
 無論その日に向けての準備も前々から進めているわけで、子供へのプレゼントに何を買うつもりだという話をされることは何度かあった。

 12月に入って間もないある日、例によって考えている子供へのプレゼントのリストを見せられながら雑談代わりにその話を聞かされる。
 友人は別にプレゼントに対する僕の意見など求めているわけでもないし、僕自身も別に彼の教育方針や子供に対しては深入りするつもりもないから相槌のカードは『へぇ』『いいじゃん』『喜ぶと思うよ』ぐらいしか用意しなくて良いのは非常に楽だ。
「それにしても毎年毎年マメだよね、毎回前の年とは違うケーキ買うんでしょ?」
「いろんなモン食わせたいんだよ。そういうお前だってクリスマスは彼女と過ごすんだろ?」
「いや?」
「……は?」
「ほら、皆だいたい本命がいるからさ。僕の出る幕はないの」
「クソみたいな理由だな」
「それにさぁ、別にクリスマスに拘ることないと思うんだよね、一緒に楽しい時間を過ごせればそれで満たされるものじゃない?」
 そう言って友人の方を見ると、何か思案するように顎に手を当てている。
「……もしかしてお前クリスマス嫌い?」
「別に……クリスマスそのものは嫌いじゃないよ」
「ハッキリしないな」
「日付が悪いんだよ日付が……僕の誕生日と同じなの」
「それはクリスマスじゃなくてお前の問題だろ、後に生まれてんだし」
「そうかもしれないけどさー」
 頬杖をついて溜息を吐く。
「お前なら誕生日とクリスマスが一緒とか2倍楽しいとか言いそうなモンだが」
「んー、祝われた事ないからなぁ」
「……」
 友人は無言で煙草を取り出し、火をつける。
「あんまりこういうの言わないようにしてるんだけどね、まぁ君がそう言うならちょっとだけ昔話してあげようかな──」
 眼下に広がる浮かれた街の景色から目を背けるようにベランダの欄干に背中を預け、日の傾き始めた薄曇りの空を見上げる。
「僕を産んだ人……僕は雪乃さんって呼んでたからそう言わせてもらおうか……雪乃さんはさ、僕の事嫌いだったんだよ」
 黙ったまま、友人は相槌を返す代わりに口から細く煙を吐き出す。
「……僕の誕生日は、雪乃さんが僕を産んじゃったことを後悔する日でしかなかった。その上家の外に出れば皆楽しそうな顔をして歩いてる。……家にも外にも、その日は僕がいていい場所なんてなくってさ」
「……そうか」
「だからその日は一人で居ることにしてるんだよ、不意に何か思い出しちゃっても取り繕わなくていいしね。……どしたの、そんな顔しちゃって。勝手に僕がベラベラ喋ってるだけだから別に気にしないでよ」
 優しいんだねと笑顔を向ければ返事の代わりに顔に煙を吹きかけられた。