友人が自分の絵を見ている様子を、一度だけ見たことがある。
たまたま絵を描いている途中に席を外していたところで友人が仕事
普段から絵を描いている後ろでその様子を眺めていたことは知って
ふと思い立ち0号のキャンバスを取り出して、
正直なところ、草臥れたというか、擦れたというか……とにかく、
けれど、そのどこか達観したような眼に光が入る瞬間は、
そんなことをぼんやりと考えながら、
「少し綺麗に描きすぎたかな」
青空を閉じ込めた瞳の絵を角度を変えて眺め、思案する。
雲一つない真昼の空のような澄んだ青に散りばめた光はそれこそ星
「…………ふっ」
キャンバスを眺め、自然に笑みが溢れる。
「良い絵だな」
「わ゛ーーーーッッッ!!???」
不意に背後から聞こえてきた声に驚くのと見られたくないものを見
「あ」
はっと我に帰ってキャンバスが飛んでいった窓の方に向かおうとす
何か言うより早くその背中はベランダの欄干に手をかけていて──
「まって、ここ三階──」
「なら投げてんじゃねえよ馬鹿がッ!」
悪態を吐くと共にそのまま飛び降りた。
それから一拍遅れて樹木が大きく揺れる音がする。
「バカはそっちだろ……!」
手についた絵の具をエプロンで乱暴に拭き、急いで部屋を出る。
建物から出て、友人が飛び降りたあたりに着く頃には、
見える範囲で大きな外傷が無いことに安堵しつつ、
「遅かったな」
「そりゃ飛び降りるよりは時間かかるよ。怪我はない?」
「ああ、問題無い。擦り傷だ」
「はぁ、それならよかった。……でもさ」
言葉を一度切り、続ける。
「なんであんなことしたの。……
「それが分からない程の馬鹿だとは思ってないんだがな」
「察してるだろうにわざわざ聞いてんじゃねえよって話?」
問い掛ければ、肯定も否定も返さず口の端を持ち上げる。
「……まあいいや、拾ってくれてありがと」
それを返せと手を差し出すが、彼は後ろ手に絵を自分から隠した。
「ちょっと」
「お前にとっては一銭の価値もない絵なんだろ? なら別に取り返す必要はない筈だ」
「それとこれとは話が別で……」
「俺にとっての価値は今し方少し上がったがどうする?」
そう言いながら落ちた時に枝に引っかけたのだろう、
「少しじゃないでしょ」
「さあな?」
「……あーもう、わかったよ。そんなに欲しいならあげるよ、
だから一旦貸してと言い換えれば、素直にキャンバスを渡される。
幸い張ってある布地が破れたり、
「ちゃんと返せよ」
「二言はないよ。それより……
「要らん要らん、もう貰ってる」
「…………は、これだから金持ちは」
随分と高い付け値で買われたことをなんとなく察し、