13.冬晴れに月は冴ゆる
とある当直明けのことだった。商店街で福引をやっていたからと戯れに一回分引けるだけの買い物をして引いてみたのだ。普段のくじ運はまあとてもじゃないが良いとは言えない程度であるから、今回も良くて台所用洗剤、九割方ティッシュだろうと思いながら静か…
本日は晴天なり
12.新年早々降るは村時雨
色々割愛するが目が覚めたら病院に居た。この話を深堀りするには非常に豊富な語彙と文章構成力が必要になるほどの……とにかく、学生時代に身に着けた護身用の剣術が役に立つような事があったのだ。 上を向いたままの視界に映るように手を動かすとあちこち…
本日は晴天なり
11.冬隣は君と共に
色づいた木々が葉を落とし始め、秋もそろそろ終わりを迎えようかという頃。過ごしやすかった気温もだいぶ下がり始め、いよいよ近づいてくる冬に備えよう、そんな頃だろうか。 先日、街中に姿の変わるキャンディがばらまかれる等事件もあったがそれ以外はい…
本日は晴天なり
10.晴天の霹靂
ある晴れた日の昼下がり。 ふと思い立って恋人に電話をかけてみることにした。ダイヤルを回す手が狂って何度もやり直しながら、恋人の電話番号にダイヤルを合わせる。 耳に受話器を当てて少し待っていると、電話の向こうから声が聞こえてきた。『もしもし…
本日は晴天なり
9.その言葉は慈雨であり喜雨だった
彼に想いの丈を打ち明けてから十日程が経った。あれから音沙汰が無く、ああやっぱりダメだったかと半ば思いかけてきたその頃、夕食の支度をしていた時に電話が鳴る音がした。それから少し置いて、俺を呼ぶ声が居間から聞こえてくる。「今行く」 そう言って…
本日は晴天なり
8.早秋の何処までも青い空
夏が終わり、次第に秋に近づいて行く九月。道行く人々は長袖だったり半袖だったりと、皆思い思いの服装で歩いている。 行き交う人々を眺めながら、その人の流れからは少し離れた場所で人を待っていた。 ぼんやりと眺める空はまだ秋の空とは言い難い目にし…
本日は晴天なり
7.狐日和は吉兆か
高校を卒業してからというもの、神崎の言っていた通り図書館に行くことは少なくなった。そのまま月日は流れ、劣化しないように丁寧に扱っていたつもりの文庫本も、何度も読み返したせいで少しだけくたびれてきてしまっていた。 顔を合わせていなければ次第に…
本日は晴天なり
6.春霖、桜を濡らして
ほんのりと色づいた桜の蕾が開き始める頃だった。 卒業式を終え、同級生達がやれ打ち上げだ、やれ寄せ書きだと楽しそうに話しているのを尻目に教室を後にした俺は、同じ学校に通っているはずのとある人物を探していた。 通っているはず、というのも、学年…
本日は晴天なり
5.本日は晴天なり
三日ほど降り続けた雨は夜のうちに止み、その日は前日までの雨が嘘のように青空が広がっている。 雨上がりの道に点々とある青空や太陽を映している水たまりを踏みながら歩けば、反射する光が目の端でちらちらと光っているのが見える。 俺は『次に晴れた日…
本日は晴天なり
4.村雨の傘の下で
その日は朝から空がどんよりと曇っていて、雨の前のような湿った、重たい空気が西京都中に吹き溜まっているような錯覚さえ覚える日だった。 案の定、昼過ぎ辺りからどんどん空が暗くなり出したかと思えば、授業を終えた生徒たちが家路につく頃には雨が降り…
本日は晴天なり
3.出来すぎた外持雨
試験勉強の為だと自分に言い訳を五つくらい重ね、翌日も図書館に来てしまった。苦しいにも程があるが、確かにこのまま帰宅してもどうせ試験勉強に身が入るとも思えないからどっちみち捗らないならばと彼に会える事を半ば期待しながらいつもの席に向かう。 …
本日は晴天なり
2.上の空は薄曇り
「……い、先輩、火!」 耳元でした声にハッと我に返る。手元を見るとフライパンの中に焦げてひと塊になった炒飯だったものが香ばしいをギリギリ通り越した香りを上げている。「あ……悪い、焦がした」 焦げすぎたところを避けて皿に移す。パラパラとは程遠…
本日は晴天なり